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5人のアイドルに日々陶酔、ハンバーグ好きな柴犬さんに惚れ込んだ日から始まった私の御宅人生

親子のような恋人のような2人がそこにいた~母と暮せば~

※本編のネタバレがあります、見たくない方は映画を見た後に是非見に来てください。








こんにちは、まいなです!


昨日、やっと映画「母と暮せば」を見て参りました。テーマが戦後を扱っているという事もあり、いつもの「ニノが出るから楽しみ~!!」というようなキャッキャした気持ちではなく、吉永さんや山田洋次監督とどんな世界を表現しているのか、遥かに上の年代を生きている方々の中で彼はどういった演技を見せてくれるのか、そこに期待を持って映画を見ました。




劇場に入ると、やはり年齢層が幅広い。

私は少し安心しました。
「あっ、良かった。二宮和也だけが見れればいいなんて人はここにはいない。作品を見に来ているお客さんばかりなんだ。」と。



そして、様々な予告ののち、母と暮せば のテーマが流れてきます。その時点でもう涙腺を刺激してきます。坂本龍一さんの手掛けた音楽は、この作品を表す顔なのです。



冒頭からプルトニウム爆弾を落下しようとする米軍の様子が映し出されて、心がざわつきます。
そして、対照的に「母さん、母さーん?」と家中に響く声で母親を呼ぶ浩二の声が聞こえてきました。


もうこの時点で親子の距離感や空気感が完成されている。馴染むまでの時間などほぼゼロに等しかったのです。



戦時中の普段の様子はもっと非日常的だと思っていた私は、浩二が普通に医者になるための勉強をしに学校へと向かう姿を見て吃驚したことを今も鮮明に覚えています。


裏を返せば、医者であれば服役期間を先延ばしにできる、服役しても医師として行くため戦場に行って死ぬことは無いだろう、ということでもある。

これは、のちに浩二と母親である信子が戦死した兄の話をする際に語っていることです。




しかし、その学校で講義を受けている時に浩二は原爆の被害にあったのです。
その音がサウンドトラックにしっかりと収録されています。聴く度に恐怖感が襲ってきます。







それから3年後、いわゆる戦後の信子と、浩二と恋人同士であった 町子 が墓参りをするところから話は進んでいきます。


本編はすべて書こうとするといくらあってもたりないので割愛させていただきますが、物語全体の空気は決して恐怖や嫌悪を強く感じさせずに、むしろ暖かく少し悲しいものであると感じます。
浩二の性格が明るくおしゃべりなせいでしょうか。
信子も浩二が幽霊であることを分かっていながらも心の拠り所として思い出話に花を咲かせています。



私も、スクリーンの向こうで信子と浩二は同じ時を生きているような錯覚に陥るのです。
しかし、そう思いかけた時に必ず浩二は悲しくなって涙を流し、姿を消すのです。そこで改めて気付かされるわけです。彼は、もうこの世の人ではないということを。






町子と浩二の空気はとても甘く、酸っぱいものでした。それはあまりに幸せで、これからを控えた希望に満ちたものでした。


だからこそ、町子の幸せについて信子は考えざるを得なかった。




「これからを生きる人」

それが町子でした。




私はこれが軸になって作品を見ていたと思います。





最後に町子は今を生きていくことを選び、信子の元へ2人で挨拶をしに来ます。
その時、信子はすっかり弱っていました。そして浩二の写真に向かい深々と挨拶をする婚約者を紹介しようとする信子が泣き崩れたとき、私は苦しくてたまりませんでした。

当然だ。あんなに幸せになって欲しいと願っていたのに実際に現実を突きつけられると苦しい。なぜあの娘だけが幸せになるの!出来るものなら息子と代わってやって欲しいのに…!


あまりに優しく、感情の起伏が激しくなかった信子にも、しっかりと人間の心情、葛藤がありました。



後からパンフレットを読んで知ったことですが、この部分の台詞はその場で足されたものだったそうです。吉永さんも「足して良かった」と仰っていました。




そして、信子も体が弱り、そのまま眠りにつきます。「また朝に来てちょうだい」そう言って眠る信子の横で、「母さん、母さん。」と呼びかけ起こす浩二。


「もうここでは会えない」と告げ、終わりを示唆した浩二に信子は必死に縋ります。でも優しい表情を変えずに浩二は続けるのです。

「大丈夫、ずっと一緒にいられるんだよ。」



それは、信子の命の終りを示すものでした。


ほっとしたような、悲しいような、浩二に両手を引かれ天国へと旅立つ信子の後ろ姿に涙が止まりませんでした。









エンドロールが終わっても、なかなか涙が止まらない私。息を吸おうとしても声が出てしまい、しん、と静まり返った映画館にはあまりに似合わない雑音で、私はハンカチを顔に押し付けながら監督の名前を見届けました。






ざっと心に残っている場面をここにしたためておきましたが、もっともっと伝えたい場面があります。ぜひ、皆さんも映画館で感じてほしいです。きっと何かが心に残るはずです。



母と暮せば、ずっと寄り添う親子のような恋人のような2人の姿がそこにはありました。

山田洋次監督作品『母と暮せば』大ヒット上映中!